テキストサイズ

teardrop

第5章 5滴

透花の前で立ち止まると、藤沢は「夏休み終わったぞ」と言った。

「今日、始業式なのに学校に来なかっただろ」

何となく緊迫した空気が流れる中、透花はどうして藤沢がここにいるのかと困惑していた。

ずーっと、黙ったままの透花へ藤沢は別の話を切り出す。

「…望月、夏休みの宿題終わったか?」

突然の藤沢の問いに透花の思考が一瞬、止まる。

そして考えながら「夏休みの…宿題?…あの、私…夏休み前から休んでたから…宿題貰ってないし、どんなのか知らないの…」と答えた。

「あ!そうか…だよな…」

藤沢に言われて宿題がある事に気付いた透花。

藤沢も返事を聞いて納得すると何やら考え出す。

「宿題がどうかしたの?」

透花が聞き直した。

「あ、いや…それは…」

慌てて何か理由を考えた藤沢は「…俺も!うん、俺も全然、宿題やってねーんだよ…参ったぜ」と緊迫感を破るように言った。

「まぁ、良かったぜ。全然、宿題やってねー仲間が他にいるなら心強ぇーよな」

不自然にも、そう言いながら鼻で笑う藤沢。

透花は意味がわからず無言のまま藤沢を見ていた。

「じゃあ俺、帰るわ!じゃあなっ」

そう言うと、スクーターのエンジンをかけて走り去って行く。

透花は藤沢が見えなくなっても暫く、その場に立ち尽くしてた。

「…仲間?」と呟く。

結局、藤沢が何をしに来たのか理解は出来なかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ