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teardrop

第5章 5滴

「付き合いの長さで言えばナリがマツより少し古いくらいだろ。俺、正直言うと友達欲しいって思った事ないし、作ろうともしなかったから中学までのダチなんてナリしかいねーんだよな」

「ナリ君だけ!?」

「そう。何か知んねーけどナリも去年、マツみたいに向こうから俺に近付いてきたんだよ」

藤沢は思い出しながら話を続けた。

「ナリって俺とは真逆で優等生タイプだろ。何で俺に懐いたか知んねーけど…何かアイツ、俺に気を使ってばっかなんだよな」

松本は成宮を思い浮かべて「それがナリ君の性格だと思うけど」と答える。

「そうだな…だから、俺もあまり素でいれねーんだよ。まぁ、アイツも最近、生意気に俺に遠慮なく言うようになってはきたけどよ」

「…生意気って」

松本は苦笑する。

「マツは、最初から遠慮なく馴れなれしかっただろ」

「言い方ってもんがあると思うぞ!…そこが俺の良いとこなのに」

「フッ…だな!最初は…何だ?この面倒臭そうな野郎は?って思ったけど」

「酷ぇ…俺は藤沢と仲良くしたら凄ぇー楽しそうだから絶対に友達になるって思ったのに…」

「ハハハ…今はマツとダチになれて良かったと思ってるよ。お前みたいな気の許せる奴も一緒にいて面白ぇ奴もいねーだろ」

藤沢はそう言うと宿題を燃やした後の松本を思い出して笑いだす。

松本は藤沢の事をまだあまり知らないが、慌てなくてもこれから先、自然に解り合えていける相手だと思った。


夏の終わりを感じながら夜は更けていった。

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