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誰も愛せない

第1章 予感…

店内が騒がしくなって来た…
団体の客が入ってきたのだ。

この店はカウンターメインで
6人ほどが座れるテーブル席があるだけで。
そのテーブル席に4人が座った。

マスターが忙しく動く。

何時もカウンターだけで、あそこに座る
客は滅多にないのに…
これはマスターだけじゃキツイな…
祐一が思っていると…

マスターが祐一に耳打ちした。
「悪い祐一…手伝ってくれ!」

「この状況じゃ断れないねっ」
祐一は席を立ち、ジャケットを脱いで
カウンターの中に入った…

幸い今日のスーツは3Pのスーツだったので
ジャケットを脱ぐだけで、それらしくなった。

「カウンターに客が来たら頼むぞ!」
マスターはそう言うと
テーブル席の客の注文を取りに言った。

何年ぶりかなぁ…6年ぶりくらいかなぁ…
カウンターの中はかわってないなぁ。
久しぶりに入った事で少しワクワクしていた。


すると…一人の女性客が入ってきた…

「いらっしゃいませ!」
あっ、名前は知らないがここで何度か
隣に座った話した事あるなぁ…

女性は祐一が座っていたカウンターの
一番奥に座った。

「どうぞっ」
祐一は女性におしぼりを出すと
目があった…
女性は祐一の顔を見て「あっ!」
と少し驚いた様子だった。

「驚きますよねっ何度かここで
お会いしてますよね?」
祐一が先に切り出した。

「え、えぇ…ここの店員さんだったんですか?」

「いえっ、違います。」
祐一がそう言うと女性は不思議そうな顔をした。

「昔ここで長くバイトをしていたんです。
もう8年位前ですけど…
今日はご覧の通り、マスターが忙しいので
お手伝いを頼まれたんです。」
っとテーブル席でお客さんと話している
マスターを指差し言った。


「そうだったんですかっ、少し…
びっくりしました。」
女性は祐一に微笑んで話し、
続けて…
「一度話してみたいなって思ってたんです。
あっ変な意味じゃないですよっ」
顔を赤らめて話す様子を見て祐一は
俺だって気になってたよ…
それに、文句なし俺の好みだよ。
でも…俺と…どこか同じ匂いがする…
今の俺じゃ…この人を傷付けそうで…
こんな事言えないけど…

「そんな事思ってないですよっ、それに
貴方みたいな美人に言って貰って光栄です」
はははぁ…調子狂うな…今日は…
なんて思っていた…










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