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なぜ?

第4章 想い

「できたぞっ!」
締切が過ぎてもまったくできなかった曲ができた。
俺はうれしくて叫んでしまった。

「うるさいよヒョン。」
「なんだウヨン。まだできないのか?」
「後ちょっとだよ。先に音楽室行ってきてよ。」
「ああ!待ってるぞ!」

居残りで勉強させられたイヤな思い出が甦ってきた。
ヒョンのヤツ、スキップしてるよ。膝痛くなるぞ…


俺はウヨンより先に終わったのがうれしくて鼻歌混じりに音楽室のドアを開けた。
えっ?こんな夜中に音楽室を使うヤツがいるのか?
耳をすませば聞こえてくるのは、悲しいメロディの歌声。

俺が生まれる前にヒットした曲だよな。
誰だ?と不思議に思い音のする方に近づけば、名津子の後ろ姿。

キレイな声が、メロディと歌詞にピッタリと合い、胸に響くようだ。


終わった瞬間、俺は拍手をした。
名津子はビックリして振り返り、ニッコリと笑った。
「もう、いつからいらしたんですか?恥ずかしい!」

一瞬涙を拭ったようなきがするが、気のせいか?

「その曲、随分昔の曲だよね?僕たちが生まれる前の?家族の誰かが聴いてたの?」
「生まれる前?私10歳ぐらいでしたよ。日本のドラマのエンディングに使われたんです。」
「えっ?10歳?名津子っていくつなの?」
「あれっ言いませんでした?私40歳です。」
「ええっ~!!てっきり一緒か下かと…」
「そんなに若く見てくれてたんですか?残念ながらオバチャンです。」
「見えない。どう見ても40には見えない。」

女性に年齢を訊くっていう最大限の失礼を働いた俺は、
これ以上ないっていうぐらいの失礼なことを訊き続けたが、
名津子はイヤな顔ひとつせずに笑って答えた。

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