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なぜ?

第2章 出会い

「あの~。馬に乗れるって聞いて来たんですけど。」
私は馬小屋の掃除をしている人に声をかけた。

「はい。乗れますよ!」
振り返った人の顔を見て、私は心の底からビックリした。
「亮ちゃんっ?!えっ?!何でここにいるの?!」
「名津子?!オマエこそ何でここにいるんだよ?!」

彼、亮ちゃんこと亮介は、私が通う乗馬クラブのインストラクターだった人だ。
オリンピックを目指して日々練習していたが、持病のせいで辞めてしまい、その後の行方は知らなかった。

「たまたまここで馬の世話する人を探しててさ。好きなだけ乗って良いって言うし、給料も良かったから、来ちゃったんだよ。名津子、ここにいるってことは、アリエスの優秀セールスってこと?え?店は?」
「別に優秀って訳じゃないわよ。たまたまよ。店は、臨時休業。」

私のもうひとつの顔はカフェの経営。
といっても、自分一人の小さな店だ。


「ところで、馬、馬に乗りたい!」
「ああ。ごめん。コイツでどうだ?」

彼がちょうどブラシをかけてた大きな黒い馬。
ワゴン車ぐらいありそうな。

「可愛い!名前は?」
「ガブリエル。」
「こんにちは。ガブリエル。」

手を出すと大きな舌で舐められた。

「ちょっと人を選ぶけど、名津子ならいいパートナーになると思うよ。」
「ホント?うれしい!便利だよね~。私のできなさ加減を知ってる人がいると!」
「名津子は十分に上手いよ。」
「ふふっ。ありがとう。」


それから私はガブリエルを連れて散歩に出た。
本当におとなしい馬で、頭も良かった。

いつの間にか、海まで来ちゃった。
あっ、あの人たち撮影してる。

そこにはジェット機で一緒だった6人の姿があった。
なぜか見ちゃいけないような気がして、私は早々にガブリエルに乗って、来た道を戻っていった。

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