テキストサイズ

売り専ボーイ・ナツ

第2章 売り専への道

それから一時間。
パソコンのあるこの部屋(どうやらここはボーイたちの控え室兼事務室みたいだ)に2人の男の子が出勤してきた。

1人は、黒髪で俺と同い年ぐらいの男の子。
白いTシャツの袖をまくっているが、そこから二の腕にいれた大きめのタトゥーがのぞいている。

もう1人は、茶髪で中肉中背。
こちらも恐らく俺と同年代。
服装も髪型もどこにでもいる普通の男の子だが、口を開くとアレっと思うようなおネェ言葉だった。

2人とも、特に俺のことは気にせず、部屋に置かれた大型テレビでDVDを見ている。
米倉涼子主演の「黒革の手帖」だ。
コウさんが、「ここ来ると、みんなそれ見るんだよね」と笑った。

なんだか俺は、いたたまれなかった。

明らかに新顔の俺がいても2人は特に気にかける様子はない。
コウさんはパソコンに向かって何かの作業中。
タイキくんは、いつのまにか部屋の隅で毛布をかぶって寝ていた。

俺は、いったいどうすれば•••?

あいにく俺は、初対面の相手に自分から積極的に話しかけられるほど社交的ではない。
一度話し始めればすぐに打ち解けられるのだけれど。
仕方なく俺は、携帯を取り出して意味もなく昔のメールを読み返したり、しばらく連絡していない友達にメールしたりした。
それで、とりあえず一時間ちょっとは時間をつぶした。
さすがにもうメールする相手もいないな。
そう思い始めた頃、部屋のドアが開いた。

「終わったー」

そう言って、1人の男の子が入ってきた。
金髪で小柄。耳にはたくさんのピアスが並んでいた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ