テキストサイズ

普通×地獄=不幸↓

第1章 最初の夢と現実

その日は大雪でとても寒かった。約50km離れた巡回コースで張り込みをする事にした。車を停めライトを消した。時間は夜中12時近く、気温-9℃だった。私は少し窓を開けタバコを吸い、日報を相方と書いていた。「猫の鳴き声がする」と言った。私はエンジンを止めた。確かに声がする。周囲は、家が三四件に街灯が一つだけ照らされ雪の壁だけであった。相方とライトを持って周辺を探した。辺り一面真っ白な雪の中、黒っぽい物が見えた。近づいて行くと二匹の子猫がいた。一匹がグッタリしている猫を一生懸命に舐めていた。頭をかじられた跡が付いていた。周りを見ると、子猫の場所から山の方に向かって足跡が残っていた。その方向にライトを向けると、小さな動物の目が反射した。驚いて、山の中に急いで逃げて行った。一匹は元気だったが、もう一匹はダメかもしれないと思った。私は腹の下に、そっと人差し指を入れ持ち上げたが全く動かない。もう一匹の猫が鳴いた。その時、耳が少し反応して動いた。相方と二匹の猫を抱え車に戻り、足元に置きヒーターを全開にして暖めた。張り込みを切り上げ、コンビニがある所まで急いで行った。店でホットミルクを買い、ダンボール箱を貰い会社に向かった。着く頃には、二匹共元気になっていた。この二匹の子猫は色柄は違うが双子のようだ。一匹は、戻って来た他のチームの一人が、私が弱っていた方を家に連れて行った。朝5時になっていた。子猫と言っても歩くのがやっとの子猫だ。家に着き、牛乳を温め飲ませた。猫の鳴き声で、家族全員が起きて驚いていた。小さな黒と銀色のトラ模様子猫が目の前にいる。子供達が黙っている訳がない。取り合いだった。妻は、迷惑そうであった。私が座っていると、膝の上に座り、ベッドに入ると腕枕。私が家の中を歩く度に後ろから着いてくる。妻も最近では、トラ吉の面倒をみる係りになっていた。名前は、子供達がつけたが今では、呼び名はトラになった。大きくなったトラは今も元気で相変わらず、私のベッドの上で昼寝をしている。お腹が空くと私の肩に両手をかけ鳴きながら見つめている。さて、トラは私の今の心境がわかっているのかも知れない。 つづく

ストーリーメニュー

TOPTOPへ