
愛のカタチ
第1章 ON~社会人×大学生~交わる心編~
智「和、明日用事あるの?」
和「別に無いけど…」
智「じゃあ俺ん家でいい?」
なんだか見た事のある景色だなと思っていた。
大野さんの家はすぐそこだ。
智「和の家に送った方がいいかとは思ったんだけど、細かい住所思い出せなくってさ」
和「ああ、うん…」
智「それとも、タクシー捕まえようか?」
和「いいよ。おおのさん家がいい」
智「ふふ、分かった」
帰るもんか。
折角大野さんから誘ってくれたんだ。
智「ぐっ、こ、こら和。苦しいって(笑)」
和「しっかり掴んどかないと落っこちちゃうじゃん」
離さない。
少し胸は苦しいけど、絶対離さないんだ。
智「取り敢えず、水だな」
和「ありがと…」
ちょこんとソファーに座って水を貰う。
俺が水を飲むのを、大野さんは立ったまま見てる。
和「座んないの…?」
智「ん? ああ…」
俺の隣に座った。
いつもより少し距離を置いて。
智「気分悪くない?」
和「ん、大丈夫」
そうは言ってもふわふわしてる。
気分は悪くないけど、折角大野さんに会えたのにこんなんじゃ、時間を無駄にしそうだ。
智「揺れてるじゃん(笑)」
和「なんか、ふわふわして」
仕方無いなと、ボソッと呟いたかと思ったら、開いた距離を詰めた。
智「ベッドで寝ようか?」
俺の肩を抱いて大野さんの肩に凭れさせてくれた。
和「え…」
智「心配すんなよ…。俺はソファーで寝るから」
低いトーンで言うんだ。
ふわふわした俺の脳に、その声が響く。
智「立てる?」
両脇を支えて俺を立ち上がらせる。
だけど覚束ない足は力が入らなかった。
和「あ」
わざとよろけてやろうかと思ったけど、わざわざそんな真似しなくても良かった。
智「ほら、心配させんなよ…。奪っといて良かった…」
俺を支えながら耳元で声を出す。
その声は、大野さんの香りと同じでとても甘く、酒なんて入って無かったとしても俺はクラクラするんだ。
和「今の、どういう意味…」
奪っといて良かった。
そう聞こえた。
ふざけすぎたと謝ったあの時のキスと、今の台詞。
酒で呆けた頭を回転させるには時間が掛かる。
だから、貴方が教えて。
