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愛のカタチ

第1章 ON~社会人×大学生~交わる心編~



智「どういう意味って…」


俺をベッドに寝かせながら大野さんは話す。


智「そんなフラフラじゃ心配するに決まってるだろ。お前可愛いんだから」

和「え?」

智「だから。只のヤキモチ」


やきもち?
焼いたの? 俺に?


和「え、でも、ショウクンは…?」

智「は?」


眉をひそめてキョトンとする。


和「や、だから折角ショウクンと一緒にいたのにどうして」

智「そりゃ、お前が心配だったからに決まってるじゃん。何を言ってんの」

和「ショウクン帰ったの?」

智「帰ったよ?」


ものすごく普通に返してくる。


和「でもショウクンとおおのさんは」

智「え、なに。さっきからどうしたの?」


俺の質問が本当に分からなそうなその顔が、俺を混乱させる。


智「なんなのさっきから。翔くん翔くんて。一目惚れでもした?」

和「すっ、する訳無いじゃん!」

智「じゃあなに。ひょっとしてヤキモチ?」


キョトンとしていたのに、途端に意地悪そうな笑みを浮かべる。

俺をからかう時だっていつもふにゃっと笑っていた。

だけどこの意地悪そうな笑みは、どこかニヒルでとても妖しく見えたんだ。


智「やべ…。俺もちょっと呑みすぎたかな…」


横たわった俺の隣に座っていた大野さんは、俺に向き直る。


智「そんな潤んだ目で見んなよ…」


低い声を俺に聞かせると、俺の頭をポンポンと撫でた。


智「じゃ、隣の部屋にいるから。何かあったら呼んで」


そう言って俺から手を離すんだ。

この間のように、俺から離れて行くんだ。


和「待って」


だから俺は離れて行く大野さんの手を掴んだ。


智「ん、どうした…?」


俺が掴むと大野さんは立ち止まるんだ。

俺を振り切って進まない。

必ず立ち止まって、俺に振り返る。


和「やきもちだよ…」


振り返ると俺を見るんだ。

俺の口から何が出てくるのか、しっかりと聞いてくれるんだ。


智「え…」


そして大野さんは俺に歩み寄る。

いつもそうだった。


智「和…?」


だから今日も。


ちゃんと俺に、近付いて。







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