テキストサイズ

愛のカタチ

第1章 ON~社会人×大学生~交わる心編~



智「なんで泣いてるの…」


俺に歩み寄った大野さんは眉を下げて聞く。
少し心配そうな、情けない顔で。


智「気持ち悪い?」


体半分起こして必死に大野さんの手を掴んでる。
ぎゅっと握った俺の手は少し震えてるかもしれないけど、絶対に離したく無いんだ。


智「薬も飲んだ方がいいか」


俺の潤んだ瞳を覗き込む大野さんは、俺の手を解こうとするんだ。


智「和?」


絶対に離すもんか。


智「薬、取ってくるね?」


解かないで。


智「ふふ、すげえ力…」


黙ってたって分かるんだ。
俺が一言も話さなくたって、この人には分かるんだよ。


智「吐いても知らねえぞ…」


俺の握る強さと揺れた瞳で、この人は察するんだ。

だから俺の隣に座るんだ。

体半分起こした俺の隣に座って、俺の背に腕を回してくれる。

その回した腕で俺の背を擦ると、俺は凄く温かくなって。


和「吐かないもん」

智「気持ち悪くないの?」

和「うん」

智「でも目、潤んでるぞ…?」


貴方が温かいから。
だから俺の瞳は勝手に潤むんだよ。


和「大丈夫だよ…」


もう涙が零れそうで。

何故だかわからないけど勝手に涙が出て来そうで。


智「ん」


すぐ側にある大野さんの胸で顔を隠した。


智「ふふ、擽ってぇ」


ぐりぐりと顔を押し付けて、大野さんの胸で涙を拭くんだ。

そうすると大野さんは俺の体を抱えて、頭をぽんぽんと撫でる。


和「ふ…」


泣いてるの、バレてるんだろうな。


智「弱いのにそんな呑むからだよ」


ふんわりと俺を包んで、柔らかい声を聞かせてくるんだ。

それはまるで子供をあやす様に優しくて。


智「お、強いなお前…」


もっと強くしがみつきたくなっちゃうんだよ。







ストーリーメニュー

TOPTOPへ