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愛のカタチ

第1章 ON~社会人×大学生~交わる心編~



智「ほら、横になった方がいいよ」


俺がしがみついて離れないから、大野さんは俺を抱えたまま転がるんだ。


智「全く、どうしたんだよ…」


俺の背をぽんぽんしながら大野さんは頬杖をついてる。
薄く開けた目の前に少し起こした首があったから、きっとそんな態勢になってるんだ。


和「ふぅ…」


くっついてると安心する。
あったかくて十分安心するのに、背はぽんぽんと撫でられて。
その心地好いリズムに、もう何も考えられなくなる程だ。


智「ふふっ」


その鼻から抜けるような笑い声は甘くて。
顔なんて見てなくても、どんなに優しい顔で笑ってるか容易に想像出来る。


智「本当お前は甘えん坊だな」

和「…そんな事無いよ」

智「そんな事あるよ。覚えてる? 俺が大学生の頃だって」


ああそうだ。
あの時も俺は、大野さんにしがみついて離れなかったんだ。


智「酔っ払ってたからあんまり覚えてないんだけどさ」

和「うん」


サークルが同じだったから、飲み会に俺も参加したんだ。
俺はまだ未成年だったからウーロン茶だったけど、この人はガンガンお酒を呑んで。


智「あぁ、誰かに引き摺られてんなあと思ったら、お前だったの」

和「ふふ」


酔っ払っちゃってどうしようもなくて。
だから俺が大野さんを連れて帰ったんだ。

俺は未成年だったから断わろうかと思ってたのに、大野さんも参加するって聞いたから。
だからウーロン茶しか飲まないのにわざわざ参加したんだ。


智「お前んち行ったの、アレが初めてだったな…」

和「うん…」


飲みの席では少し離れて座った。
だってこの人の柔らかい雰囲気に、周りが寄ってくるから。
後輩の俺は遠慮して離れてたんだ。

だけど遠くでずっと見てた。

変な女が寄ってくるんじゃないか、口説いてる奴はいないかと、オレはずっと冴えた頭で見てたんだ。


智「あれ? けど、お前あん時ウーロン茶だったよな?」

和「そうだよ?」

智「…酔ってなくてアレかよ(笑)」


出た。思い出し笑い。

懐かしそうに、楽しそうにクスクスと笑うんだ。


俺を見ながら過去の俺を思い出してる。



その笑顔は、この俺と昔の俺、両方に投げかれられてるんだ。






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