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愛のカタチ

第1章 ON~社会人×大学生~交わる心編~





その時も俺は大野さんの事が好きだったけど、まだ無邪気だったんだ。

だから俺は、二人きりになって嬉しくて、やれ水だの薬だのと甲斐甲斐しく大野さんのお世話をしたんだ。


智『んぁ、和。もう、水飲めない…』

和『駄目だよもっと飲まなきゃ。明日辛くなるよ?』

智『もう腹いっぱい…』


俺をチラッと見ながらコップを押し返すんだ。
その目はまんまるで唇は尖ってて。
俺より3つも歳上なのに、凄く可愛いんだ。


智『ねむい…』

和『もう寝る?』

智『うん』


目を閉じながら俺に訴える。
その姿がなんとも愛おしくて、俺は笑いを堪えながら大野さんを抱えたんだ。


智『…和』

和『なあに?』

智『なんでニヤニヤしてるの…?』

和『もっ、元々がこんな顔なんだよっ』


俺の嬉しさは隠せなくて。
頑張って堪えてたけど、顔に出てたみたい。


和『よ、いしょ…っ』

智『ふぅ…、ありがとね』

和『どういたしまして…って、わっ?』


ベッドに横たえた大野さんの胸に、俺は引き寄せられた。


智『ふふっ、和は優しいね』


むぎゅむぎゅと俺を抱っこして、頭をぐりぐりと撫でる。
その大野さんの声は無邪気で、ニコニコと笑いながら俺を抱き締めたんだ。


和『ちょ、おおのさ』


胸に押し付けられて息苦しくてさ。
いや、すっごい嬉しかったんだけど、やっぱ呼吸がしたくなっちゃって。

だから俺は大野さんの胸からなんとか顔を離したんだ。


和『…っ』


その時見えた大野さんの顔。

パッと見上げたすぐ目の前にあったその顔に、俺は思わず息を飲んだ。


智『ん…?』

和『あ、ううん。なんでも』


見た事無かった。
あんな顔。

凄く優しい顔をするのに、何処か寂しそうに見えて。


ニコニコと笑ってるんだとばかり思ってた。



だけど大野さんは、細めた瞳を揺らして、俺を見てたんだ。






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