
愛のカタチ
第1章 ON~社会人×大学生~交わる心編~
和「あれはだから…、おーのさんが寂しそうな顔してたから…」
智「ええ? そんな顔してないよ」
和「してたよ」
一瞬だったけど、俺にはそう見えたんだよ。
だけどすぐに戻した表情で、貴方は笑ったんだ。
いつもと変わらない柔らかい笑みを、俺に向けたんだ。
和「なんかあったのかなって。心配になんじゃん…」
智「ふふ、やっぱりお前は優しいね」
あの時も言われたな。
あの時と同じ様に俺を胸に抱えて、同じ様に優しい笑みを浮かべる。
智「まぁ、ちょっと驚いたけどね。まさかチューされるとは思ってなかったし」
なんだかあの優しい笑みが無理をしている様に見えて。
可哀想に思えたんだ。
だから慰めたくて。
貴方に笑って欲しくて、只それだけだったんだ。
智『…っ?』
和『なあに?』
智『や、なあにって』
和『もっかいしてあげよっか?』
智『ちょちょちょ』
俺はこの人が大好きで、いつもくっついてたくて。
和『そんな驚く事?』
智『そりゃそうだろ』
和『ほっぺじゃん』
こうやってふざけると、すぐに寂しそうな顔なんて引っ込むんだ。
智『ほっぺでもだよ…』
だけどこの時は少しおかしな顔をしたんだ。
和『…そんなヤだった?』
智『嫌な訳無いでしょ』
驚いた顔を見せてすぐ、困惑した様な表情をしたんだ。
和『でも顔、引きつってる』
智『んな顔してないよ。急にチューするから驚いただけ』
和『驚いただけ?』
智『うん』
和『ほんとに?』
智『ふふ、ほんとだよ(笑)』
少し困った様な顔で、ふふっと笑う。
和『元気になった?』
智『最初から元気だよ?』
和『嘘ばっかり』
智『嘘じゃねえ…って、おいこら馬鹿』
満面の笑みも好きだけど、こんな困った様な笑顔も大好きだった。
なんだか許されてる気がして。
智『こ、こらっ、やめろって』
和『ふふっ』
智『もう元気っ。 チューのおかげで元気になったから!』
和『そ?』
俺がどれだけ困らせても大野さんは怒らないんだ。
笑って許してくれる。
俺の無邪気を、笑って受け入れてくれるんだ。
