
愛のカタチ
第1章 ON~社会人×大学生~交わる心編~
智「元気になったからってどんだけ言っても、ぜんぜん離してくんなかったじゃん」
和「そうだっけ?」
智「そうだよ」
離す訳無いじゃん。
ずっと離れた席に居たんだ。
早く貴方に触りたくて仕方が無かったんだ。
智「どんな大変だったと思ってんだ…」
困った顔をしながらも、しがみついて離れなくなった俺を胸に抱いてくれた。
降参したとでも言うように、ひとつ溜息を吐きながら、俺を胸に抱いて眠りについたんだ。
智「あんなの寝れたモンじゃねえ…」
嘘つき。すやすや寝てたじゃん。
俺はその規則正しい胸の上下が幸せで、なかなか寝れなかったけど。
目を閉じて嬉しさを噛み締めては、目を開けて上下する胸を見てたんだ。
和「よく寝てたじゃん」
俺を抱きながら気持ち良さそうな寝息を立てるから、どんな顔をしてるんだろうと少し顔を上げた。
だけど俺の目に飛び込んできたのは、顔じゃ無くて首だった。
それは普段の柔らかいこの人からは想像も出来ない様な、男らしい首だったんだ。
智「フリだよ」
和「え…?」
智「お前の心臓の音が伝わってきて、落ち着ける訳無いだろ…」
ドキッとしたんだ。
尖った喉仏に、くっきりと浮いた血管。
その血管は、触らなくてもドクドクと脈を打っているのが分かった。
和「起きてたの…?」
急に魅せられたその男らしさに、俺の心臓は跳ねたんだ。
智「無邪気すぎるんだよ…」
今もその男の部分を魅せるんだ。
智「お前の好きって、一体なに…」
急に声のトーンを落とす。
低くて、柔らかくて。
智「…お前が離れないからだよ」
和「え?」
その柔らかい声にそぐわない、熱い眼差しをしてる。
智「もう知らね…」
和「お、おのさ」
もう夜だったから外は暗いんだけど、部屋は少し明るかったんだ。
隣の部屋は煌々と照明が点いていて、このベッドルームにまで明かりが漏れてた。
だけど、ふと俺の視界から明かりが遮られたんだ。
智「和…」
大野さんが故意に遮ったんだ。
俺の視界を奪って、感覚だけを伝えてくる。
和「ん…」
その暖かい感覚は、間違いなくこの人の温もりなんだ。
