
愛のカタチ
第1章 ON~社会人×大学生~交わる心編~
いつの間にか仰向けに転がされてる。
その俺に覆い被さる様に、大野さんは俺の唇を塞いでる。
智「逃げてもいいよ」
俺の頬を優しく掴みながら言うこの人は、言葉とは裏腹に俺の唇を食する。
和「ふ…」
優しく食みながら差し込まれる舌はとても熱くて。
智「嫌じゃ無いの…?」
されるがままになってる俺に、不思議そうな声を聞かせるんだ。
智「…早く逃げろって」
和「ん、ぅ、ヤだ」
逃げろと言う割に、俺をしっかり押え付ける。
智「逃げなきゃ、止まんねえだろ…」
逃げられる訳無いのに。
和「やだよ。逃げ、ない」
この人がどんな気持ちで行動してるのかなんて読めない。
だけどその唇から漏れる吐息は熱くて。
智「ふざけてる訳じゃ無いんだよ…」
その熱い舌が、男の大野さんを伝えてくるんだ。
智「お前の好きは、俺と同じなの…?」
和「…っ」
熱い唇は、俺の耳を襲う。
智「逃げないからだよ…」
熱い声を、俺の内耳に直で聞かせるんだ。
智「…もう、知らねえからな」
ゾクゾクする程の低いトーンを出す。
和「あ…」
その熱さを知ってる。
この間も貴方は熱くて。
智「和」
ふざけすぎたと俺に謝ったあの時でさえ、貴方はとても熱かった。
智「わかんねえよ。教えて…」
でも今はふざけてないと言うんだ。
だとしたら。
和「お、おのさ…」
今と同じように熱かった貴方は、ふざけてた訳じゃ無いんでしょ?
和「俺の、好きは」
ふざけたと、嘘をついただけなんだよね?
智「和の、好きは…?」
ほら、貴方だって目が潤んでる。
凄く熱い眼差しで、俺を見てるじゃん。
智「何…?」
俺の好きはいつもふざけてた。
嫌われるのが怖くて、本当の好きは見せられなかった。
だからこの人も俺に合わせるんだ。
いつも俺に合わせて、ふざけた好きを俺に注いでた。
和「ずっと変わってないよ」
だけど今、確信する。
和「おおのさんと、同じだよ…」
馬鹿だな俺は。
ちょっと見たらすぐわかるじゃん。
智「同じ…?」
だってこの人は嘘なんて付けないんだ。
こんなに正直に熱い瞳を向けてくるのに、俺が見てなかったんだ。
素直になるなんて、俺には難しかったから。
