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愛のカタチ

第1章 ON~社会人×大学生~交わる心編~




なんならずっと張り付いてたい。
いつも側で貴方を見てたいんだ。


大野さんが大学生の頃はそうだった。
いつも俺は隣にくっついて、大野さんを背凭れにしようと肘掛け代わりに使おうと、何も言わずに俺の側にいてくれた。


だけど今は状況が違うじゃん?

貴方は仕事で忙しくて、俺がこうやって会いに来ないと顔も見せてくれないでしょ?

そんなの俺は耐えられないよ。



和「見つかって良かったね」

智「うん。この黒が一番なんだよね」

和「黒は黒じゃないの? みんな同じでしょ」

智「違うよ」


こうやってね。
ヘンなこだわりがあるんだ。


智「例えば和と全く同じ人が居たとするでしょ?」

和「うん」

智「だけど他の人からは同じに見えても、俺にとっては全然違うの」

和「うん?」

智「だから… 俺はこの和じゃないと駄目なんだって事だよ」


なんだよ大野さんのくせに。
ニヤけちゃうだろ。


智「ふふ、わかった?」

和「なんだよその例え。ヘッタクソだな…」


ニヤけてるのがばれない様に俯いた。
だけど大野さんはそんな俺の顔を覗き込んで来るんだ。

俺が顔を赤くして、少し笑ってるのが分かる筈だ。


智「どっか行きたいとこある?」

和「え?」

智「息抜き。するんでしょ?」

和「あ」


そうだった。


和「何処でもいいの?」

智「ん、行けるとこならね」


行きたい所ならある。
ずっと行きたかった場所があるんだ。


和「おーのさん家に行きたい」


卒業して大野さんは少し大人びた。
俺より年上なんだけど全然可愛くって、だけどなんだか違う気がするんだ。


智「俺の家?」


話し方とか、振る舞いとか。
もともと優しかったけど、それが最近はもっと優しく感じる。


和「駄目?」


その目付きや、その柔らかい笑顔。
しなやかな手の甲に浮かぶ血管。
そのどれもが、凄く大人に見えるんだ。


智「来たって面白く無いよ?」


面白いよ。
面白く無い訳無いじゃん。


和「俺のマジック見てよ。新作あるんだ」


そんなの嘘だけど。


だけど。



もっと貴方に近付きたいんだ。







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