
愛のカタチ
第2章 NO~サラリーマン×花屋~天使みつけた編~
智「どうして泣いてるの...?」
知らないうちに、俺の頬は濡れていた。
和「シャワーだよ」
智「違うよ」
シャワーだと誤魔化そうと思ったのに、智は敏感に察知する。
智「...カズが泣く事無いよ」
和「だけど俺」
智「ノコノコ着いてきたのは俺だし、隙だらけだったんだ。悪いのは俺」
和「サトシ...」
智「ふふ、悪い事したと思ってるんでしょ? だったらいいんだ」
こんな状況で、泣きたいのは智の方だ。
なのに俺が泣いた。
普段はたいして涙も出ないし、そんな感情なんてもう湧かないんだろうなと思っていた。
智「俺よりお兄さんなんでしょ? 泣くんじゃないよ...」
その笑顔の下に負ったばかりの傷を隠して。
尚も涙を流す俺を心配する。
智「のぼせるから、出よ?」
立場が逆転だ。
どっちがお兄さんなんだか分かりゃしない。
智「ちゃんと拭かなきゃ風邪引くよ」
自分は濡れたままなのに、俺をタオルで包む。
ニコニコと笑顔を向け、俺を慰めるんだ。
和「サトシも、拭かなきゃ駄目じゃん」
智「うん」
熱を吐き出し放心し、言葉もろくに発さなかった。
俺に負わされた傷を処理しようと、ぼーっとする頭で考えていたのかもしれない。
だけど俺が泣いてしまったもんだから。
自分の傷を癒す間も無く、俺の相手をした。
和「あ、それ」
相当頭が混乱しているのかもしれない。
和「びしょびしょだよ...」
だから干してもいない、濡れたまま脱ぎ捨ててあった自分の服を身に纏うんだ。
智「じゃ、帰るね」
和「え?」
チラッと俺を振り返ると、淡々と言葉を発した。
和「何処に...」
智「家」
和「鍵、無いんだろ?」
そんな濡れたままで何処に行くんだ。
智「あ~、俺の勘違いみたい」
そんなに分かり易い嘘をついて。
智「雨も上がったみたいだし」
俺を見て少し微笑むと、すぐに窓の外に目をやった。
智「じゃ...」
そのまま目線を落とし、出て行こうとする。
その微笑みは限界を迎えたのかもしれない。
上手く笑えないなと悟り、その顔を見せない様に目線を落としたのかもしれない。
智「ばいばい」
笑顔を作る事の出来なくなってしまった天使は、名残惜しさも見せずに俺の前から去るんだ。
