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愛のカタチ

第2章 NO~サラリーマン×花屋~天使みつけた編~



笑顔を放つ事の出来なくなった天使は、その醜い顔を隠すんだ。

本当に醜いのは、その天使から笑顔を奪った者なのに。




和「サ、サトシ...っ」


俺の声は届いた筈なのに、何の反応も見せず智は出て行った。

ドアを静かに締め、パタンと小さな音を響かせて。




和「くっそ...」


俺は自分が情けなかった。

平凡な毎日にうんざりし、非凡を求めた。

その結果がこれだ。


和「なんで何も言わないんだよ...」


責められた方が随分とマシだ。

なのに智は俺を責めもせず、俺に笑顔を向けた。


和「はぁ...」


頭を抱え部屋を見渡すと、智の居た形跡なんて殆ど無かったんだ。

とくに物を散らかした訳でもないし、びしょ濡れだった服も着て行った。

只あるのは、ベッドに残った情事の跡だけだった。


和「サトシ...」


あんな濡れたままで、家にも帰れない。

今頃何処かで泣いてるんじゃないだろうか。

それとも途方に暮れて、暗闇をふらふらと彷徨っているのだろうか。


和「...っ」


光を無くした後ろ姿が目に浮かんで、いてもたってもいられなくなった。

ぎゅっと痛む胸を抑え、俺は部屋を飛び出したんだ。




和「っはぁ、はぁ...っ、何処行ったんだ...」


智の家なんて知らない。
行きそうな場所にもまるで検討がつかなかった。
ただ闇雲に、辺りを走り回った。


和「あ...」


小さな公園。
その隅に配置してあるベンチに、智は居た。


智「カズ...」


智は、俺の砂利を踏み締める音に気付いた。


和「...やっぱ鍵無いんじゃん」


ベンチがあるのにそこには座らず、ベンチを背もたれにして地面に座っていた。


智「...なんでタオルなんか持ってるの」


小さく丸まって座る姿に胸が苦しくなった。


和「お前が濡れてるから」


タオルだけ持って出てきたんだ。

家の鍵も持たず、なんならドアなんてきちんと閉まってすらいないかもしれない。


和「また冷えるよ...」


大きなタオルで智を包んだ。

俺がどれだけ謝っても、コイツを温めてやれないかもしれないから。



だから俺は、大きなタオルだけを持って出てきたんだ。






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