
愛のカタチ
第2章 NO~サラリーマン×花屋~天使みつけた編~
タオルに包まれた智は、大人しく俺に拭かれている。
わしゃわしゃと頭を拭き、濡れた服の上からは、身体をぽんぽんと抑えた。
智「ふふ...、夜中にタオル持って走ってたんだ...」
頭からタオルを被った智は、その隙間からほんの少しだけ、笑みを見せた。
和「取り敢えず、ベンチに座ろ...?」
脇の下に手を入れて智を抱えようとした。
だけど、智の体は動かなかった。
和「ほら、こんなとこじゃ汚いよ?」
せーのと、もう一度力を込める。
それでも智は動かないんだ。
智「腰、抜けちゃって」
和「え?」
智「立てないんだよね...」
タオルを被り、俯きながらほんの少し笑みを零して話す。
和「サトシ...」
いつから震えていたのか。
脇に入れた俺の腕を掴んでいるその手は、笑みを零しているにも関わらず、少し震えていたんだ。
智「またそんな顔して...」
きっと虚ろな目をして暗闇を彷徨っていたんだろう。
そして目の前に出て来たベンチで重い身体を休ませようとしたんだ。
だけど、ベンチまで辿り着けなかった。
俺の家から出た智は、張っていた気を緩ませ腰を抜かしたんだ。
和「サトシ、本当に」
智「もういいってば(笑)」
よく見れば、智はその膝まで小刻みに震わせている。
智「もう、いいんだよ...」
俺は何を勘違いしてたんだ。
コイツは自分で傷なんて癒せないのに。
智「だから、そんな顔しないで...」
只の人間だ。
天使なんて俺の勝手な幻想だ。
智「ふふ...、本当カズは、泣き虫なんだね...」
笑っているのに、その顔を俺に見せられないじゃないか。
和「泣いてないよ」
智は苦しそうなのに泣かないんだ。
だから俺は、その痛そうな笑顔を抱き締めるんだ。
