
愛のカタチ
第1章 ON~社会人×大学生~交わる心編~
和「こっちは何の部屋?」
智「あっ」
間が持たなくなって俺は部屋をうろついていた。
トイレを借りたついでにあちこちチョロチョロと動き回った。
智「ここは駄目」
ドアノブに掛かった俺の手に、大野さんの手が被さる。
和「なんで…?」
智「仕事部屋だから。きったないんだよ(笑)」
久し振りに触れたその手の感触に、俺の心臓は高鳴る。
その脈がバレないようにと、俺は冷静に対応した。
智「もう探検は終わり」
その俺の手を掴んだままソファーへ向かう。
ぽすっと俺を座らせても、大野さんは俺の手を握ったままだ。
智「なんか久し振りだ」
和「なにが?」
智「和の手。ハンバーグみたいで可愛いんだよな」
血管の浮いた手で、俺の小さな手を握る。
いつもそうだった。
俺と手が触れると、条件反射のように俺の手をにぎにぎと握り込んだ。
それを今もしてる。
智「ココも、好きなんだよな…」
俺の顎を大野さんの指が撫でる。
顎に掛かった指は、くるくるとその場所にあるホクロを撫でるんだ。
和「くすぐったいよ…」
俺の間近に顔が近付く。
その目線は顎を見ていて、俺とは視線が合わない。
だから俺は、ずっと大野さんの顔を見ていられるんだ。
智「擽ったいの? 敏感なんだね…」
いつもより低めのトーンがとても柔らかくて。
智「じゃあ、ココは…?」
ニヤリと笑う大野さんの意図を見抜けなかった。
和「…ひゃ」
智「ココも大好きなんだ」
和「ちょ、やめ…っ、ひゃ、ひゃっうははっ」
くっそ。
腹を揉まれた。
智「んふ、ぷにぷにだね。変わってなくて嬉しいよ」
和「もおっ」
一瞬の大人っぽい雰囲気に飲まれて悪戯を見抜けなかった。
それが嬉しいのと悔しいのとで、俺はポカポカと大野さんを叩いたんだ。
智「いてっ、いてててっ」
その低いトーンに惑わされてドキッとしたんだよ。
なのに腹を揉んで雰囲気はブチ壊し。
ちょっとでもその気になった自分が恥ずかしかった。
智「こら和、痛いってば」
いつもならごめんごめんと笑って俺を宥める。
その大野さんが俺の手首を掴んで俺を見た。
いつもと少し違う。
まさか怒らせてしまったのか。
今度はその雰囲気に飲まれて、俺は固まってしまった。
