
愛のカタチ
第3章 ON~カウンセラー×生徒~カモフラージュ編~
智「で? 今日はどうしたの?」
カウンセリング室にベッドなんて無い。
ちょっとリクライニングするような椅子はあるけど。
和「別に」
智「何も無いの?」
先生は呆れ顔で俺を見るけど、俺だって呆れてるからね。
智「基本、カウンセリングは授業中はやらないんだよ?」
和「知ってる」
だけど連れてきたのはアンタだし。
智「まあいいや。保健室で休んでた事にしといてやるよ」
和「ああ、あのセンセ。アンタの言う事ならなんでも聞いてくれそうだもんね」
智「は?」
あ、眉をひそめた。
和「あの人、アンタの事大好きなんでしょ?」
智「何を言って...」
和「まるわかりだよ。アンタの前だと声色違うもん」
次は溜息かよ。
和「アンタの言う事ならホイホイ聞くんでしょ? だからこんな所でだって何でもヤッてくれるんじゃん」
智「...」
和「便利な女見つけたよね」
智「二宮...」
言いすぎたかな。
嫌味たっぷりに言ってやったんだ。
すると、先生はいつもの優しい顔を閉じ込めてしまった。
智「どうしてそんな事を...?」
和「...だって、聞こえたもん」
鍵のかかった部屋の中から、妖しい声が聞こえてた。
声というよりは、息遣いなんだろうけど。
女の方は押し殺した吐息が漏れてる感じで。
どんな恍惚な表情を浮かべてるのだろうと少し気になった程だ。
智「何が...?」
先生のその息遣いは
和「先生の、声」
熱くて、荒くて。
その息が何を表してるのか察知した瞬間に、こっちの胸がカッと熱くなって。
智「声...?」
普段聞かせる柔らかい声とは全く違った。
智「ふふ...っ、俺、声なんて出してないよ...?」
柔らかい笑みを浮かべて、柔らかい声を聞かせる。
どこまでも落ち着くその声は、カモフラージュだ。
