
愛のカタチ
第3章 ON~カウンセラー×生徒~カモフラージュ編~
対面で座る椅子は、只の丸椅子だ。
それに比べて先生の座る椅子は、肘掛けの付いたリクライニングするちょっと立派な椅子。
智「何を想像してる...?」
その椅子から身を乗り出し、俺を見るんだ。
和「別に想像なんて」
じっと見つめて小首を傾げる。
そして、いつもの柔らかい声で言う。
智「カウンセリングが必要かな...」
だけどその声はカモフラージュなんだ。
さっきの妖しい声を隠す為の、膜なんだ。
和「...そんなの必要無いよ。てか、アンタみたいなのにやって欲しくない」
甘くて優しくて、俺はすっかりカウンセリング室の常連だった。
だけど本性を見てしまったんだ。
今までのあの柔らかい雰囲気も、全て嘘で塗り固められてたんだ。
和「あんな事やっといて、先生なんて呼べる訳無いじゃん」
智「え...」
なんでそんな寂しそうな顔を見せるんだ。
どうせそれも嘘なんだろうよ。
智「お前なんか勘違いしてない?」
どうやって誤魔化すつもりだよ。
言ってみろよ聞いてやるさ。
カウンセラーのくせに口下手だって事は既に分かってるんだ。
智「俺、先生じゃないよ?」
和「...は?」
え、なに。
そこはカウンセリング室で何やってたかを誤魔化すんだろうが。
智「俺教師じゃないし。委託されて来てるだけで」
和「先生じゃないの...?」
智「うん」
白衣なんて着てるからかなぁ。皆先生って言うんだよね、なんて呑気に話している。
智「あ、でも。カウンセラーは間違いないけどね?」
和「あ、そう...」
衝撃の事実に混乱して話をすり替えられてしまった。
俺も納得してる場合じゃない。
先生だろうがそうで無かろうが、もはやそんな事は関係無い。
どこで何やってんだって話だ。
智「で、もうひとつあるんだけど」
和「なに...」
口下手でもやっぱカウンセラーって凄いんだな。
いとも簡単に話題を変えやがった。
智「さっき。俺がしてた事...」
ほら。
柔らかい顔が消えてる。
これが素の顔なのかな。
俺を騙してたその腹黒さ、晒け出せよ。
