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愛のカタチ

第3章 ON~カウンセラー×生徒~カモフラージュ編~




なんだかんだで先生は俺に触れなかった。

まあ当たり前なんだけど。

だってスクールカウンセラーと只の生徒だし。
関係はそれ以上でもそれ以下でも無い。

俺は常連だし、他の生徒よりは先生とよく会ってるとは思うけど。
だけどそれまで。


なのに。


あんな至近距離で、あんな顔を見せるから。
だからだとは思うんだけど、何故か俺の頭から先生が離れてくれない。



潤「あ~、また」

雅「ん?」

潤「ほら、あの保健の先生。声変わっちゃってる(笑)」

雅「すげぇ撫でてる」

翔「撫でてるってナニ(笑)」

雅「猫なで声だよっ」


チラッと目をやると、あの女教師にまとわりつかれて困った顔をする大野先生が見えた。


翔「あ~あ~。いいのかよ先生があんなんで(笑)」

潤「大野先生も人が良さそうだしね。断れないんじゃない?」


ニコニコとあしらいながら、先生はなんとか交わそうとするけど。
だけど真っ直ぐ歩けてない。
あの女が先生の進路を邪魔してるから。


智「あっ、二宮くん。ちょうど良かった」

和「へ」


女の肩に手を置き、じゃあまたねと会釈をして女を振りほどいた。
そのまま颯爽と俺の元に来ると、少し情けない顔をしながら俺に話しかけるんだ。


智「もう帰るの?」

和「あ、ハイ。そのつもりですけど」

智「...ちょっと、ごめんね? 借りてくよ?」

翔「あ、どうぞ」

潤「じゃあ俺ら先帰ってるから」

雅「また明日ね~」

和「え」


女だけじゃなく、俺の友人まで振り払い俺の手を取った。

背後ではまだあの女が先生を目で追ってるし。


智「ちょ、来て」


俺の手を引いたまま、先生は歩くんだ。

さようならと声を掛ける生徒に笑顔を振り撒きながらも、俺の手は離さずに。



俺は嫌じゃないんだ。

こうやってこの先生に手を引かれるの。

なんだか安心して、いつも少し心がほわっとした。



だけど今日は。


ほわっとするんじゃなくて、ちょっとドキドキしてしまったんだ。






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