テキストサイズ

愛のカタチ

第1章 ON~社会人×大学生~交わる心編~



光の消えた俺の視界。

じんわりと温かくなった俺の唇。

全部この人の仕業だ。


和「ん…」


握った手は俺の膝の上のままで、唇を触っていた手は俺の頬を掴んでいる。


智「和…」


聞き逃しそうな程に小さな声で俺の名を呼び、頬を掴んでいた手を俺の後頭部に回す。

その回した手で俺の後頭部をぐっと掴んだ。


和「んん…、お…の、さ」


俺に緊張が走る。

優しく触れた唇で、俺の唇を食すように啄むんだ。


智「嫌じゃないの…?」


大人しくされるがままになっていた俺に大野さんは問う。
唇を少し離して、俺を見るんだ。


光の戻った俺は少し目を開ける。
大野さんの問いには答えられなかった。


目が合った大野さんは見た事の無い顔をしていた。
どきっとしたのと、恥ずかしいのと緊張とで、俺は言葉が出なかったんだ。


和「ん、ふ…」


再び光が奪われた。
もう1度ふんわりと啄むと、俺の唇に温かく濡れた感覚が広がる。


智「何を思ってるの…?」


そっと俺の唇の隙間に舌を忍ばせながら聞くんだ。

そっちこそ何を思ってるんだよ。

もしかして、俺の気持ち分かってたの?


智「和…」


ゆっくりと入ってくる舌は熱くて。
とても熱くて優しくて。
ぎゅっと閉じた瞼から力が抜けるんだ。


和「おおのさ…」


この人の香りはとても甘い。

間近で嗅ぐその匂いに、俺の頭はクラクラする。


和「…っ」


ビクッとした。
力の抜けた瞼が、またぎゅっと閉じた。

首筋に触れた大野さんの唇の感覚に驚いたんだ。


智「ごめん」


固く力の入った俺の肩を大野さんが撫でる。


智「ふざけすぎた…」


俺から離れたんだ。

そっと肩を撫でて、俺とは目を合わせなかった。
俯いた顔をそのまま背け、俺から静かに離れたんだ。



繋がれたままだった手も、俺から離れた。






ストーリーメニュー

TOPTOPへ