愛のカタチ
第3章 ON~カウンセラー×生徒~カモフラージュ編~
和「したい」
智「お?」
“胸が擽ったくなるような恋、したくないか?”
そう言った先生の言葉に、俺は頭で整理する前に口を開いてしまった。
和「先生と、したい」
智「おお...」
あ、しまった。おかしな事を言っちゃったなと思ったのに、俺の口は更におかしな事を放った。
“先生としたい”なんて、言うつもりもなかったのに。
智「やっと、興味が湧いたか...」
和「別に興味って程じゃ」
やっぱり先生はカウンセラーで、俺を心配しただけだ。
毎日つまらなさそうに生きてる俺を見て、なんとかしてやらないとと思ったんだろう。
智「きっと楽しいよ」
なのに俺がおかしな事を口走ったから。
真っ直ぐ先生を見る生徒を断わるなんて、この先生に出来るんだろうか。
智「俺と、したいんでしょ?」
どうやって断わるんだろう。
俺は難しいぞ。拗ねちゃったら長いんだぞ。
智「...来月末からかな」
和「へ?」
智「やっぱ一応社会人だし。お前一応生徒だから」
あ、なんだ。断り文句の導入か。
智「だから、ちょっとだけ我慢な?」
和「...なにを」
智「お前もうすぐ卒業じゃん。んで俺は、契約が3月末までだから」
もっとスパッと断わりゃいいのに。
グダグダ長いし意味わかんねえな。
智「だからそれからなら、出来るだろ?」
和「は?」
智「...したいんでしょ? 俺と、ドキドキきゅんきゅん」
和「へ...」
ドキドキきゅんきゅん。
したい。かも、しれない。
智「なんの顔だよそれ。胸が擽ったくなるような事、したいんじゃないのかよ」
和「あ、ああ」
え? 断られてないの?
それどころか詰め寄られてないか?
智「来月末まで我慢出来たら、ちゃんと痺れさせてやるよ…?」
きょとんとする俺の顎を持ち上げ、しっかりと俺の目を見る。
俺はと言えば先生の言葉の意味が上手く飲み込めなくて、間近にある先生の瞳を揺れた目で見てるだけで。
智「ほら、楽しいでしょ?」
きゅっとなったり暴れたりと俺の鼓動は忙しい。
だけどそのザワつく心臓は少し楽しそうだ。
そんな、感じがした。