天然執事はいかがです?
第15章 パーティー
「離れたくないよ……ずっと…
ずっとそばに居てよ…」
アルトさんが居れば私は何も要らないから…
「私…アルトさんが…ッ!!」
アルトは泣きじゃくる菜月の唇に自分の唇を当てた。
触れるだけのキスだった。
アルトさんは私に最後まで言わせてくれなかった。
「言ってはなりません…お嬢様……
たとえ、俺と貴女の気持ちが同じでも……
貴女はお嬢様、俺はただの使用人なのです……」
アルトさんは今までで一番悲し気に微笑んだ。
どんなに願っても
どんなに貴方を想っても
どんなに想いが通じあっても
やっぱりダメなの……?
私とアルトさんは結ばれない………?
「俺のことはお忘れください…
貴女はちゃんと良家の方と結ばれてください…
それが何よりもの貴女の幸せです……」
「違う…そんなの違うよッ!!
私の幸せは私が一番分かるッ!!
誰かに決められるものじゃないッ!!
私はアルトさんじゃなきゃダメなんだよ…!!!」
後ろで僅かな靴音がし、私とアルトさんは離れ振り向いた。
「母さん、父さん…」
「旦那様…奥様……
申し訳ございません……ッ」
アルトさんはスッとお辞儀をした。
「使用人の身でありながらお嬢様に邪な感情を……」
「顔を上げなさい、アルト」
父さんが低く落ち着いた声でそう言った。
やけに周りの空気が静かな気がした。
中ではまだ皆楽しんでいるのに、ここだけ時が止まったみたいになっている。