テキストサイズ

天然執事はいかがです?

第16章 二人きりの旅行




終業式が終わり、私とアルトさんは有也さんが運転する屋敷の車で駅に向かった。

有也さんが運転すると速すぎて、捕まらないか、事故らないかと心臓に悪いことばかりだ。


「楽しんで来いよー!!」

「うん!!」

「はい!!」



新幹線にはアルトさんが窓側、私が通路側に座った。

終業式が終わってすぐなので、お腹が空く……


私達はすぐに駅弁を買った。

「この駅弁美味しいねッ!!」

「はい!……あ…」


アルトさんは何かに気づき、私の顔に手を伸ばした。

「ご飯粒が……はい、取れましたよ」


笑いながら、取った私の口の端についていたご飯粒を食べた。


その笑顔にきゅんとしてしまう。


可愛い…

アルトさん可愛い過ぎッ!!


可愛さに耐えていると声を掛けられる。


「お嬢様?具合でも悪いのですか?」

「ちっ、違うの!!アルトさんが可愛いくて…!!…あ!」


本人に言ってどうする!!

「私が…可愛いのですか?」

「う…うん……」

私は恥ずかしくて目をそらした。


「私には…」

赤く火照った頬に冷たい手が触れ、こちらを向かされる。

「お嬢様が世界一可愛らしいですよ」


さらりとアルトさんはそう言った。


嬉しいな…


アルトさんの言葉はいつでもまっすぐで裏表もなく、一つ一つに重みがある。



ふと舞弥に言われたことを思い出す。

舞弥はやれって言ってたけど…

アルトさんには高度だと思うんだよな…


「あの…アルトさん」

「はい、何でしょう?」

「舞弥に言われたことがあるんだけど…」

「舞弥様ですか?」


あれは旅行のことを舞弥に話したときのことだ。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ