天然執事はいかがです?
第16章 二人きりの旅行
―――――
―――
『へぇー!!二人で旅行ね~
羨まし~い』
舞弥は頬杖をしながら上目遣いでニヤニヤと笑ってくる。
私はそれにムッとする。
『べ、別にやましいことするわけじゃ…ッ!!』
私は図書室の長机を右手でバンッと叩いた。
『二人とも静かにしてくださいね?』
図書当番の俊くんが本から顔をあげ、そう言った。
『ごめん…俊くん』
『菜月のせいで俊介に怒られた~!!』
『なんでよ!!』
そんな先輩二人を見て、俊介は呆れ笑っていた。
『てゆーか二人きりなら名前で呼んでもらえば?
敬語もナシで♪』
『何言って…!!』
『婚約してるのにぃー?』
『うっ…』
そりゃアルトさんには名前で呼ばれたいけど……
『前出来なかったじゃん……』
『アレはアレ。コレはコレ♪
とにかく頼んでみなよ♪』
『うーん…』
―――――
―――
「ってことがあって…
あの…二人きりの時は、お嬢様と執事じゃなくて……
"恋人"として接してくれない、かな……?」
うぅ……恥ずかしい……
「分かりました、菜月」
え…今……
私は顔をあげ、アルトさんを見た。
「菜月」
アルトさんは愛おしそうに甘い声で私の名前を呼んでくれる。
「………ッ」
「菜月?どうかしたの?」
恥ずかしい…ケド嬉しい…!!!