天然執事はいかがです?
第16章 二人きりの旅行
寝る部屋は二階の有斗さんの部屋で二人で寝ることになった。
栄理子さんは変に張り切っていて、私と有斗さんの布団はぴったりとくっついていた。
部屋に入ると私達は、困った顔で布団と交互に見合わせた。
「これは……」
「栄理子さん…何考えてるんだろうね…」
私達は交互に部屋でパジャマに着替えた。
先に私が着替え、有斗さんが部屋に入り、私は廊下で待った。
「入って良いよ」
有斗さんは部屋の襖を明け、顔を覗かせた。
部屋の電気を消し、布団に入る。
お互い黙ったままだった。
「ねぇ…菜月。…手、握ってもいい?」
「うん…」
隣の布団から細くて冷たい指が暖かい私の指に絡んだ。
「有斗さんの指…冷たいね……」
「そうかな……菜月の指は暖かいね……」
再び沈黙が私達を包む。
「明日ね…父さんと母さんの命日なんだ」
「…うん」
「ここから車で一時間以上の〇〇〇市にお墓があるんだ」
「…うん」
布が擦れる音がする。
「一緒に来てくれる……?」
天井を見ている私の耳にか細く囁かれた。
すぐに有斗さんの方を向くと、有斗さんは静かに泣いていた。
音もたてずにただ静かに透明な涙が彼の頬を伝っていく。
私は心臓をギュウッと握られた気がした。