天然執事はいかがです?
第16章 二人きりの旅行
栄理子さんの美味しい朝御飯を食べ、私と有斗さんは栄理子さんの車でお墓のある〇〇〇市まで向かった。
栄理子さんが丁度仕事が休みでよかった。
車をレンタルする手間が省けたから。
一時間半もあれば〇〇〇市に入った。
市街を抜け、農村に出た。
「ここは1つの町だったんだ。数年前に市と合併しちゃったけど」
「そうなんだ…」
私は普段見慣れない大自然に目を奪われていた。
狭い道路に車を止め、坂を上った。
上に着くと、20個はないお墓がキレイに並んでいた。
その間の道を通り、神木家と書かれた墓の前で立ち止まった。
「…久しぶり。父さん、母さん」
有斗さんは少し眉を顰めた。
「父さん、母さん。俺ね、貴方達が両親だと思えなかった。帰る居場所なんて無いと思ってた。何も分からなかった。でもね……」
有斗さんは優しげに私の方を向いた。
「こんな俺でも居場所が出来たよ。大好きな人も初めて出来たんだ。だからね…」
居場所…家族……
栄理子さん、藤原さん……
友香さん、南さん、有也さん……
父さん、母さん……
旦那様、奥様……
大好きな菜月……
「二人ともありがとう」
産んでくれてありがとう…
俺の親で…ありがとう……
有斗さんの横顔を見ると照れくさそうにしていた。
私は有斗さんの手を握った。
「帰ろう?家に。東京の家はまだだけど……」
「そうだね。栄理子さんが心配しちゃうね」
有斗さんは強く握りかえしてくれた。