天然執事はいかがです?
第16章 二人きりの旅行
その日の夜、有斗さんは一枚の写真を見せてくれた。
「四歳のときに一回だけ旅行に行ったんだ。そのときの写真だよ」
ビジネスマンらしい顔つきをした若い男の人に、強気な眼差しの女の人。
可愛いというよりはキレイな美人さんで、旦那さんにお似合いだった。
そんなお父さんに肩車してもらっているのは、幼い有斗さん。
黒の目は真ん丸で純粋な眼差しだ。
「有斗さん可愛い!!顔はお母さん似なんだね」
「中身は父さんにも似てるって言われるけどね」
ハハッと有斗さんは困った顔で笑った。
「昔はね、この写真を見るのがツラかったんだ。それでも…
捨てられなかった。
忙しい二人と一緒の写真はこの一枚だけだったから……」
「そうなんだ……」
本当に忙しい人達だったんだ……
有斗さんは暗い空気を変えようとしたのか、明るい声で話し出した。
「明日はクリスマスだし、街に行こうか!!」
「うん!!沢山楽しもうね!!」
幸せに浸りながら、二人で眠った。