天然執事はいかがです?
第3章 新任の執事
「あの……」
菜月の視線に気づき、アルトは声を掛けた。
「………」
だが、菜月の耳には届いていない。
「あの…菜月お嬢様?」
「はいっ!?」
名前を呼ばれたことにより、私はアルトさんの声に気づいた。
「私の顔に何かついているでしょうか…?」
ヤバい。まじまじと見すぎた。
アルトさんは小さく首を傾げた。
「あっ、何でもない!!
何でもないんです!!」
「そう…ですか?」
「そうそう!!」
「あ!!そうだわ!!」
今度は母さんが割り込む。
「アルト君、執事歴は?」
「3年と8ヶ月です。まだまだ未熟でございますが……」
「なら、菜月専属の執事はどうかしら!!」
…はい?私専属だぁッ!?
「爺やは前みたいにお父さんの仕事のお手伝いに行って、その間、アルト君が菜月の執事をやればいいわ♪どうかしら!?」
名案じゃないッ!?と言いたげな顔をする母さん。
その目は輝きに満ちている。
私達はその気迫に押され、頷くしかなかった。
「じゃあ、決定ね♪」
えぇーっ!?
私、爺や以外の執事はつけたことないのに…!!