天然執事はいかがです?
第4章 意識の相違
「あっつぃ…」
外に出ると、まだまだ蝉達が、やけに煩く鳴いている。
まだ8月の終わりだもんな…
10月くらいには涼しくなるか…
そんなことを思いながら、庭の花園へ足を運んだ。
少し行くと、小さな休憩所のようなところがある。
柵のようなもので周りを造っている。
それに薔薇達が纏わりつくように、棘のある蔓が生い茂り、そこに色とりどりの薔薇達が咲いていた。
それだけで目が潤う。
体の潤いは、この暑さで蒸発してしまいそうな勢いだが。
中のベンチに横たわった。
薔薇の茂みで、調度良く光が遮られ、気持ちがいい。
私は暫くの間、薔薇の香りに包まれていた。
遠くから声がしてくる。
私はそれに飛び起きた。
誰か走ってきてるけど、皆同じ使用人の服を着ているので、誰だかまでは分からない。
ただ、スカートではないので、執事だろう。
私のところまで走ってきたのは、アルトさんだった。
青い手提げを笑顔で渡してきた。
「これって…」
「お弁当ですよ。昼食、楽しんで食べてくださいね」
とびきり優しい笑顔に、一瞬心臓辺りが変になった。
なんかヘン。
ヘンだよ……
私はお礼を言って、チャリで学校に向かった。
でもいつもみたいに飛ばさずに、お弁当が崩れないように安全運転をした。