天然執事はいかがです?
第1章 プロローグ
藤原老人が菜月の部屋をあとにして、五分もしないで菜月は部屋を飛び出した。
階段を踏み外してしまいそうな勢いで、バタバタと急いで駆け降りる。
途中、青いスリッパが勢い余って飛んでいきそうだった。
寝癖のついた栗色のセミロングの髪に、第一ボタンを外し、腕捲りをしたワイシャツ。
襟下に通すタイプの真っ赤な指定のリボンを付けている。
それにベージュのベストを着こなし、その下で紺のプリーツスカートが慌ただしく揺らめく。
靴下はプリーツスカートと同じ色のもの。
そんな姿の菜月は洗面所に駆け込み、髪を結い、洗顔を始めた。
二分もしないで菜月は洗顔を終わらせ、洗面所を飛び出し、ダイニングへと向かった。
バンッと勢いよく扉を開けたため、使用人達全員が、菜月の方に振り向いた。
う…しくじった…
菜月は赤い顔で俯き、静かに扉を閉め、そそくさと自分の席へと足早に向かった。
すぐに藤原が寄り、椅子を引いてくれる。
その椅子に慣れた様子で菜月は静かに座った。
向かいの席には、食事中の母がいた。