天然執事はいかがです?
第1章 プロローグ
「おはよう、母さん」
「あら、おはよう菜月。朝からあなたは元気ね」
母は安心する優しい笑顔を、菜月に向けた。
母さんはいつも私達姉妹に優しい。
私達だけじゃなく、執事にも、メイドさん達にも、会う人全てに優しい。
裏表が無いし、だからこそ母さんの周りには常に沢山の人達がいる。
側にいた爺やは訊ねた。
「お嬢様、今朝はどういたしましょう?」
「白飯にのりたまと味噌汁と牛乳!!」
爺や笑顔のまま一瞬止まった。
いや、爺やだけではない。
この部屋にいて、彼女の発言を聞いた者全て。
母は驚かず、ニコニコとしたまま、手を休めない。
さすがは、菜月の母。
相当の強者だ。
「爺や?時間内から早くッ」
焦った顔で、菜月は藤原老人を急かした。
「かしこまりました」
藤原は笑顔のままだったが、内心驚きを隠せていなかった。
菜月相手なのだから無理もないだろう。