天然執事はいかがです?
第6章 価値と気持ち
「分かん、ない……」
「じゃあ私が選択肢出すから、選んで」
私は頷いた。
「あんたん家の使用人」
私は直感的に首を振った。
違う、そんな言葉でアルトさんの存在は表面しか表せない。
「家族」
近いも気がするけど、違う気もする。
首を振った。
「じゃあ……好きな人」
……肯定も否定も出来なかった。
『菜月もその内、恋するわよ』
なんで姉さんの言葉が……
そしてアルトさんのあの優しい笑顔が浮かんだ。
その優しい顔のまま、お嬢様って呼んでくれる。
たまに私の行動を見て、困ったように笑う。
ああ…そっか………
私は毎日見慣れたあの笑顔が見たいんだ。
アルトさんが好きなんだ。
私は言葉を失い、目を見開いたまま涙を流した。
「菜月!?」
「…きなんだ
私、アルトさんが好き―……」
「菜月……」
私は舞弥に抱き締められ、その胸で泣いた。