天然執事はいかがです?
第6章 価値と気持ち
【アルトside】
……俺は後悔していた。
何故あんなにも、お嬢様に強く言ってしまったのだろうか。
俺はお嬢様のあんな悲しそうな顔が見たかったわけじゃない。
だがそうしてしまったのは自分だ。
どう謝罪すればよいものか、俺は他の仕事が手につかなくなるぐらいに悩んだ。
悩んで悩んで悩んで……
お陰で少し胃が痛くなってしまった。
重いため息を一つ付いたとき、俺の携帯がマナーモードの設定で震えた。
ディスプレイにはお嬢様が通られている学校の名前が表示されていた。
「もしもし」
《もしもし?保健の国分です。
菜月さんを早退させますので、お迎えをお願いします》
「分かりました。すぐに向かいますので。では失礼します」
通話終了ボタンを押し、携帯をポケットにしまった。
お嬢様が早退…?
具合が悪そうには見えなかった。
では俺のせいで何か精神的な……
「……とにかく行かなきゃな」
俺は学校へと向かった。