天然執事はいかがです?
第6章 価値と気持ち
学校に着くと、すぐにお嬢様が車に向かってきた。
俺は運転席から降り、助手席側のドアを開けた。
お嬢様と目が合い、思わず
「ブッ」
…吹き出してしまった。
とても失礼な行為をしてしまった。
お嬢様は明らかに不機嫌な顔をされた。
車に乗り込み、俺は思わずお嬢様の頬に手を添えた。
きっと俺のせいで心を痛め、泣きすぎて腫れてしまった目を見る。
「……ッ」
お嬢様の頬が赤く染まった。
「…泣いたのですか」
俺の口から自然に言葉が出た。
「ちょっとだけね…」
お嬢様は俺とは目を合わせずに下を見ていた。
。
「私のせい、ですか……」
「そんなこと……」
お嬢様は再び口を閉じてしまった。
「今朝は申し訳ありませんでした……あのようなひどい言い方をしてしまい……」
俺は謝罪の言葉を必死に探した。
「…ううん、訊いた私も悪かったんだよ」
…悪いのは俺の方なのに、なんでこの人はこんなにも優しいのだろう。
「ですがっ」
俺はお嬢様に口を塞がれた。
「もうこの話は終わりッ!!
だからそんな悲しい顔しない!!今から気持ち切り替えよう!!」
お嬢様は太陽のような笑顔を見せた。
俺の口からも手を離した。
「そうですね…分かりました!!」
俺も負けないように笑って見せた。