天然執事はいかがです?
第1章 プロローグ
爺やが急いで用意したものを、菜月は五分足らずで平らげ、ご馳走さまでした、をしてからダイニングをあとにした。
洗面所に戻り、歯を磨き、リップを適当にしてから、部屋に戻る。
あーもう!!
昨日の内に用意しとけば良かった!!
とか、なんとかぼやきながら、今日使う教科書やノートを、菜月は乱暴にスクールバッグに詰めた。
そのバッグを肩に掛け、先程のように慌ただしく階段を駆け降りる。
降りながら手櫛で寝癖を少し梳かすが、風の抵抗であまり意味がない。
広すぎる玄関に辿り着くと、爺やがすでに玄関脇に立っていた。
急いでローファーを履く。
そんな菜月に爺やはいつもと同じ様子で接する。
「行ってらっしゃいませ。菜月お嬢様」
「行ってきますッ!!」
息急き切りながら、菜月は家を飛び出し、屋敷に似合わない青い自転車に手を掛けた。
よく見ると鍵が掛かっている。
鍵掛けといたんだっけ…
もう…この忙しいときにッ!!
菜月は自分で自分を責めた。
勢いよくスカートのポケットに手を突っ込むが、空っぽ。
スクールバッグの中を探すが、ナシ。
……そうだ、机の上に置いたんだったぁぁーー!!!
菜月は机の上に置いた光景を思いだし、急いで屋敷に戻った。