
天然執事はいかがです?
第8章 父からの手紙
悔しくて悲しくて前みたいに、舞弥の前で泣いたように泣けなかった。
声を必死に圧し殺して、泣いた。
なんとなく、アルトさんが部屋の前まで来ていると思った。
私はベッドに倒れ込み、眠ってしまった。
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お腹が減ったのか静かな部屋に空腹を知らせる音が鳴る。
その音で目が覚めた。
我ながら恥ずかしい起き方だった。
寝癖の付いた髪を整えていると、部屋の扉が二回ノックされた。
返事をしなくてもあんな風に部屋に駆け込んだのだ。
私が自室に居ることくらい知ってる人は知っている。
「お嬢様」
やっぱりアルトさんだった。
「お腹は空いておられませんか?良かったら夕食をお持ちいたしますよ」
私の代わりに私のお腹がぐ~っと返事をした。
扉越しにアルトさんがクスリと笑ったのが分かった。
足音が消えると、私は携帯のディスプレイを見た。
18時半過ぎか…
そりゃお腹が減るわけだ。
帰ってきたのが16時過ぎだから、二時間半寝てたのか。
私は立ち上がり、部屋の鍵を開けた。
