テキストサイズ

天然執事はいかがです?

第9章 縁談前日




私が辿り着いたのは、昔姉さんとよく遊んだ公園だった。


誰もいない公園は寂しく、今の私には丁度良かった。



風に微かに揺れるブランコに腰掛け、ゆっくり少しだけ前後に動かした。


その度に足場の砂利が鳴った。


ふと空を見上げると、そこは雲一つなく、私の大好きな蒼に染まっていた。



青い空……



―――――
―――


『待ってお姉ちゃん!!』

『早く捕まえてごらん、菜月!!』


幼い私とよく遊んでくれた加奈子姉さん。


大好きだった。



『ッた!!』

『菜月!?』


追いかけっこで転んだ私に心配そうに駆け付ける姉さん。


『ゔぅ゙……いだいよぉ…!!
おね゙ぇぢゃん……!!』


私は擦りむいた右膝を姉さんに見せた。


『薄く皮膚が剥がれちゃったか……』


じんわりと血が滲み出す右膝を見て、眉を潜めた。

『よしッ!!じゃあお姉ちゃんが痛くなくしてあげる!!』

『ほんとぉ…?』


涙と鼻水でぐじゃぐじゃな顔で私は姉さんを見上げた。


『ちちんぷいぷいの~
いたいのいたいの飛んでいけぇぇぇ~~!!』


右膝の前で回っていた人差し指は青い空を指差した。


『もう痛くない痛くない!!
ね?』


姉さんが笑うから私も笑った。

『……うん!!』




そのあと傷口は水で洗い流し、家に帰ってから薬を塗り、絆創膏を貼ってもらった。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ