
天然執事はいかがです?
第9章 縁談前日
家に帰っても誰もとがめはしなかった。
…まぁするならアルトさんしかいないし。
ひどい言葉を掛けたことを謝ると、もういいですよ、と笑ってくれた。
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《へぇ……婚約者、ねぇ…》
通話口の向こうで舞弥が呟いた。
「明日会うんだけどさ…どうしよう……」
《どうしようったって普通にお断りしちゃえばいいじゃない》
「いや…私もそう思ってたんだけど……」
詳しくその婿養子となる婚約者(仮)の話を聞くと、篠原家同様に有名な企業の次男坊らしい。
もう既に長男が家業を継いでいるらしく、婿養子になっても問題はない。
頭も私なんかと比べられないくらいに頭が良いらしい…っていうか良すぎるらしい。
問題なのは、次だ。
企業の発展のため私とその仮婚約者が婚約すれば、両者はとっても都合が良くなる。
だからこそ父さんは私に婚約を持ち掛け、なんとしてでもその話を物にしようとしているのだ。
《ふぅ~ん…菜月、完璧"食い物"じゃない》
「そうなんだよッ!!
私、企業の利益のために使われんだよ……!!
ほんっとあり得ないよ…あんのクソ親父め!!!!」
菜月の部屋の前を通った使用人はその声に驚き、誤って抱えていたシーツを落としそうになった。
そんなことを知らない菜月は話を進める。
