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天然執事はいかがです?

第10章 縁談当日




「どうぞ」


アルトさんに渡されたのは二種類のタオル。

私は指差しながら訊いた。


「これどう使うの?」

「交互に10秒ずつ目に乗せてください。そうすれば少しは隈が消えますよ?」


私は言われた通りに10秒ずつタオルを乗せていった。

数回繰り返し、もう一度鏡で顔を見るとだいぶ隈が消えていた。


「これなら今日の縁談は大丈夫でございますね」

「うん。ありがとうアルトさん」

「いえ、これも執事として当然の務めです」


執事として当然の務め…か。


何だか体が重くなった気がした。

アルトさんは執事だから優しくしてくれるのかな……


だったら初めから私の想いに行き場所なんて……



そんな暗い気持ちのまま、気づけば縁談の相手が屋敷に来た。


ダイニングに集まり、父さん、私、母さんの順に長すぎるテーブルの端へ行き座った。


向かいに相手の父、相手、相手の母が座った。


部屋の角にはアルトさんと爺やがいる。


「わざわざお越しいただき申し訳ない。相馬さん」


相馬さんって言うんだ…

知らなかった。


「私の娘の菜月です。ほら、挨拶しなさい菜月」


父さんにやれ、と横目で睨まれ、必死に愛想笑いを浮かべた。

「……篠原 菜月です。よろしくお願いします」

「相馬 健(タケル)です。こちらこそよろしくお願いします」


相馬さんの第一印象は優等生。


襟足も整ってて、顔も繊細だ。

髪は漆黒の闇の色に染まり、瞳は母親似なのか、少し茶色がかっていた。



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