天然執事はいかがです?
第11章 不安と準備
「爺やッ!!」
「はいッ!!お嬢様、あまり老い耄れを驚かせないで下さい。
驚きましたぞ…」
爺やは心臓に手を置き、困った顔をしている。
「ご、ごめ…あのッ
アルトさんは!?」
「アルトですか?アルトなら………」
すると玄関の扉が開いた。
「お二人ともどうされたのですか?」
そこに居たのは首を傾げたアルトさんだった。
体から力が抜け、私はその場に座り込んだ。
「アルトなら私の代わりに出掛けておったのですよ」
爺やは笑った。
私にとったら笑い事じゃない。
アルトさんは下から顔を覗き込んできた。
「菜月お嬢様?お座りになって具合でも悪いのですか?」
「……か」
「え?」
「ばかぁッ!!!!」
「えぇ!?」
「いっつも家にいるくせに、なんで人がもう居なくなっちゃったのかなって心配してるときに居ないのさッ!!」
「も、申し訳ございません!!
…私が居なくならないか心配してくださったのですか?」
私は素直に頷いた。
本当に心配して急いで帰ってきたんだもん。
「大丈夫ですよ。まだ屋敷には居ますから」
アルトさんは笑ってそう言った。
「旦那様のお手伝いで海外へ行くことは決まっておりますが、その他はまだ決まってないのです。決まったらちゃんとお嬢様にもお教えいたしますよ」
「…約束だよ?」
私は小指を差し出し、約束に指切りをした。
爺やは微笑みながら黙って見ていた。