天然執事はいかがです?
第11章 不安と準備
失礼します、と言ってからアルトさんは部屋に入った。
「お嬢様、やはりまだどれにするか悩んでおりましたか」
困った顔をしながらも笑っていた。
「うん……
アルトさんはこの三着でどれが私に一番似合うと思う?」
私は三着を手に取り、アルトさんに見せた。
頼む…!!
水色以外を選んでくれッ!!
「うーん…」
顎に添えられた手袋に包まれた指はある一着を迷わず指差した。
「やはりこれでしょうか」
…水色。
「さっすがアルト!!」
「アルトくん分かってるじゃない!!」
友香さんと南さんはアルトさんを挟み、嬉しそうに騒いでいる。
その反面、私は肩を落としていた。
マジかよ…
こんなセクシーなの着れないよ……!!!
「お、お嬢様?
やはりおきに召しませんでしたか?」
アルトさんは悲しそうに訊いてくる。
「……だって。だってさ…
これ…胸が…」
「胸?」
「谷間見えちゃう………」
私は俯いたままそう呟いた。
アルトさんの返事はない。
不思議に思い、私はそっと顔をあげた。
するとアルトさんは耳まで真っ赤にして、言葉に迷っていた。
それを見て友香さんと南さんが笑って囃し立てる。
「何想像してんの~?
アルト~?」
「アルトくんやらしい~!!」
「ちっ、違います!!!
俺は…その……ええっと…!!!」
こんなに取り乱すアルトさんは見たことがない。
私はポカンと口を開けて、三人のやり取りを見ていた。
私の視線に気づき、アルトさんは足早に退却した。
「しっ、失礼しますッ」