天然執事はいかがです?
第11章 不安と準備
【アルトside】
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部屋着に身を包んだ俺は枕から顔をあげ、深いため息をついた。
「俺何してるのかな……」
ふと恥ずかしそうにドレスのことを話していたお嬢様を思い出す。
カァァ…と俺は身体中が熱くなった。
俺は枕を抱きしめ、布団の上を転がりながら悶絶した。
俺は…執事なんだ。
藤原さんが居なければ俺は生きていなかった。
そして藤原さんが誇りを持ってこなす執事の仕事を選んだんだ。
個人の感情を持ち込むことは……許されない。
だけど……離れる前に少しだけでも俺の気持ちをお嬢様に伝えられたら………
そこで無遠慮に部屋の扉が開けられる。
俺は瞬時に起き上がった。
ゴンッ
「イタッ!!」
二段ベッドの上のベッドの底に頭をおもいっきり当ててしまった。
下のベッドはやっぱりイヤだ………!!
改めて後悔した。
「な~にやってんだ~?アルト?」
部屋に入ってきたのは俺の上のベッドを使っている有也さんだった。
「有也さん!!」
「ほれ、お前の晩飯」
入り口に立ったまま、簡素な夕食が乗ったトレイを差し出してくる。
俺はベッドから出て、受け取った。
「わざわざすみません」
木目調の低いテーブルに乗せ、俺は正座した。
「いーってことよ。それより…」
有也さんは靴を脱ぎ部屋に上がると、俺の前にあぐらをかいた。
「ちょ~っと男同士で話そうぜ?」
「?はぁ……??」
俺は訳も分からず首を傾げた。