天然執事はいかがです?
第13章 雷雨の土曜日
すぐさまにもう一回雷が近くに落ちる。
私は唇を噛み締め、耳を塞いだ。
パッと部屋の電気が消えてしまう。
部屋の中の光は携帯の光だけ。
「怖いよ………誰か……ッ」
また雷が落ちる。
「……ッッ」
耐えかねた私はクローゼットに隠れた。
怖い怖い怖い………!!!!
助けて……アルトさん!!!
慌ただしい足音が耳に入る。
瞬時に部屋のドアが開けられる。
「お嬢様ッ!!!」
叫びにも近いようなアルトさんの声だった。
ここ…ここだよ!!!
それでも恐怖で声も出ない。
今度は先程よりも近くに落ちたのか、劈くような音が辺りに鳴り響く。
私の体は恐怖にびくつき、その拍子にクローゼットに頭をガンッと強く打った。
それでも痛みよりも恐怖が頭を支配する。
足早にアルトさんがクローゼットに近づくのが分かる。
すぐにクローゼットの扉は開けられた。
「~~~~ッ!!!」
「菜月お嬢様…!!!!」
私は泣きながら、アルトさんに抱きついた。
恐怖で相変わらず声は出ないが。
ガタガタと震える私の体をアルトさんは優しく包み込んでくれた。
「もう大丈夫ですから…そんなに震えないで…?」
耳元で小さく囁く。
私はアルトさんの大きな背中にしがみついた。
そんな菜月にアルトはフッと頬を緩め笑った。
そして寝癖のついた頭を優しく撫でた。