天然執事はいかがです?
第14章 沢渡夫婦
「失礼します」
「いえ、お構い無く。
あなたが新しい菜月の専属執事さん?」
私を除いた三人は各々軽く会釈をした。
「はい。まだまだ未熟者ですが……」
「でもよく働いてるって爺やから聞いたわ。若いのに頑張ってるのね」
アルトさんは褒められたため、少し照れた。
「そうだわ菜月。あなた今年はちゃんと踊るわよね?」
姉さんは踵を返し、こちらに向き直った。
「うっ……」
「サボるのはもう許さないってお養父さん怒ってたよ?」
望さんも困った顔でそう言った。
「だって踊る人なんか居ないもん……」
「アルトくんは?」
「私…ですか?」
アルトさんは声をあげた。
「え…でも……」
「頼んできなさいな♪」
「頼んできなよ菜月ちゃん♪」
私はノアを抱いたまま、アルトさんに近づいた。
…あれ。
気のせいかな?アルトさん、なんか後ろに下がってる?
私が一歩前に進めば、アルトさんは一歩後ろに下がる。
また一歩進めば、一歩下がる。
「アルト、さん…?」
「あのそれ以上は……
うわぁッ!!」
ズイッと歩み寄るとアルトさんは顔を青くした。
背には壁が当たり、逃げ道などない。
「もしかして…猫苦手?」
アルトさんは青い顔のままコクコクと頷いた。
そんなアルトさんをノアはじいぃぃ…とつまらなそうな目で見つめている。