天然執事はいかがです?
第14章 沢渡夫婦
「うぅ……ッ」
アルトさんは苦しそうに目を閉じた。
ノアはそんなアルトさんの顔を嗅いでいる。
頭、おでこ、頬、鼻……
ノアが顔から離れたのでアルトさんはゆっくりと目を開けた。
するとノアはそんなアルトさんの鼻にふくよかな肉球のついた前足を置いた。
私の部屋にアルトさんの悲鳴が響き渡ったことは言うまでもない。
アルトさんは口から泡を吹きそうな勢いで、青い顔のまま失神してしまった。
「アルトさんッ!?」
私はノアを手放し、アルトさんの肩を揺らした。
勿論反応ナシ。
姉さんはあらあら…とは言うもののどこか笑っており、ノアを抱き上げた。
望さんも困った顔で笑っている。
「どうした!?」
ノックなしで有也さんが勢いよく部屋に現れた。
「菜月お嬢!!これは一体!?」
「それが……」
ノアのことを有也さんに話した。
その間にノアは加奈子から離れ、今度は倒れているアルトの腹に乗った。
「…そういうことか……」
有也さんは納得すると倒れているアルトさんに近づき、頭をペシペシと叩いた。
「こら、アルト!!起きろ!!」
「うぅーん……」
重い瞼をアルトさんはあげた。
…が、ノアのせいで今度は屋敷の隅々にアルトさんの悲鳴が響き渡った。
そのままパタリとまた意識を失ってしまう。
「どんだけ猫嫌いなんだよ……
お嬢、とりあえず今日はもうコイツ使えそうにねぇから、部屋に連れてくわ!!」
「う、うん……」
有也さんはそう言うと、アルトさんの服の襟を掴み、ズルズルと引きずっていった。
「面白い子ねぇ…
有也も相変わらずね~…」
姉さんは間延びした声でそう言った。
隣で望さんが軽く笑った。