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第1章 SO~小人×一般人~進撃の小人編~
ピピピ
タイマーが鳴る。
翔「あ、出来たかな」
翔はテーブルの上を走って薬品の入ったビンに駆け寄った。
智「どう?」
翔「ん。大丈夫そう」
なんだ、失敗してないのか。
智「量は? どれくらい?」
翔「まあ俺小さいから...」
翔に言われた量をスポイトに入れた。
智「はい」
それをそっと手渡すと、翔は感極まったのか真剣な面持ちで言う。
翔「智くん。本当に、ありがとう...」
智「ふふ...、どういたしまして」
ああ、もうこれで小さな翔とはお別れか。
手離したくないけど、スポイトを持ってぷるぷると震えてるし、仕方ないから戻れる事を一緒に喜んであげよう。
翔「じゃ、じゃあそろそろ...」
智「うん」
翔は緊張してるのか、ゴクリと喉を鳴らした。
翔「飲むよ...?」
智「ん...」
俺の小さな溜息。
今度は翔にすら気付かれない程に、小さく吐いた。
小さく吐いて、ゴクリと喉を鳴らす翔を見届けると俺は目を瞑った。
次に目を開けたら、大きな翔がいるんだ。
俺の目の前に、小さな翔じゃなくて、元に戻った人間サイズの翔がいるんだ。
翔「あ...」
覚悟を決めるか。
翔「あ...?」
そろそろ目を開けよう。
智「え...」
どこだ。
翔がいない。
智「あれ...、翔くん?」
翔「ここだよ」
キョロキョロと辺りを見回すと、俺の足元から声が聞こえた。
智「へ」
大きくなったらテーブルを潰しちゃうからと、俺の足元に翔を下ろしたんだ。
だけど薬を飲んだら大きくなる筈だから、目を開けた俺は目の前を探した。
智「翔くん...?」
だけど今、俺の足元にいるのは小人のままの翔。
智「え、なに。失敗?」
翔「そうみたい...」
俺の調合がマズかったのか。
大きくなれなかった翔は、肩を落として矢印になってる。
智「まだ材料残ってるから」
翔「うん...」
その矢印が可哀想で、失敗した事に一瞬喜びかけたけど、頑張って笑顔を堪えた。
智「翔くんがやればきっと成功するよ。俺がいじっちゃったのが悪かったんだよ」
小さいのに更に小さくなる翔が不憫で。
だから気持ちとは裏腹に、俺は翔を励ますんだ。
